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推薦の辞・帯文・書評-皮膚運動学 [理学療法]

山嵜先生、入谷先生、小柳先生、荒木先生、松井先生から推薦の辞・帯文・書評を頂きました。本著はまだまだこれからですがこれだけの先生方に頂いたこと記させて下さい。もちろん推薦ですので、かなり底上げして頂いています。感謝しかありません。

推薦の辞 (理学療法士 山 嵜  勉)
1966年、第三の医学としてリハビリテーションが日本に輸入されてから44年、リハビリテーションは本来の趣旨とは異なって身体機能障害を改善する治療医学として社会から認識されています。リハビリテーションが日本文化によってアレンジされて定着した結果、理学療法士もリスク管理のできる訓練士から身体機能障害を改善するに治療技術者として技能が要求されています。
しかしながら、リハビリテーション部門における身体機能障害に対する訓練士として教育・養成されてきた理学療法士は、身体機能障害を克服して生活動作を確立させるための知識と技術をもって治療に対応せざるを得ず、理学療法士の業務がリハビリテーションから治療の場面に広がりをみせている。今後、社会のニーズに対応できるのか、多くの理学療法士は不安を感じています。
福井勉氏の著作「皮膚運動学-機能と治療の考え方」は、まさにときを得たものといわざると得ない。職制上、身体の表面からの対応しかできない理学療法士にとって、皮膚から機能を考えたアプローチは、そく実践できる技術であり、理学療法士の技術の幅を広げられる技能になると思います。
皮膚が関節運動および動作運動に関与していることは、臨床上観察されていたものであり、一部の理学療法士が断片的に関節運動改善に試みていたが、福井氏らは、はじめて皮膚の関節運動および動作運動における関与について動作解析装置を使って検証し、皮膚から関節運動および動作機能を考えたアプローチが臨床の場面で技術として使えることを科学的に実証した。皮膚から関節運動および動作機能を考えたアプローチは一般的には理解できないかも知れない。理学療法士は、技術職としての自負から理解できないことが自分自身の知識や経験の不足が原因だとしても受け入れを拒否する傾向があります。10年、20年経て理解できたとしてもその時では遅すぎるのです。
日本人は、しばしば新しいものを評価する時は自分自身よりも権威者の評価が基準になる傾向があるが、理学療法士は破綻した身体機能構築の専門家である自分自身の眼で評価してほしいと願っています。
限りなく技能の向上を目指す多くの理学療法士の方々に、己の技能の糧として一読なさることをお薦めいたします。                                

帯文 (足と歩きの研究所  入谷  誠)
従来の運動器系疾患に対する理学療法は骨・関節、あるいは筋や腱などの軟部組織に対してのアプローチが主体をなしている。関節運動は関節軸を中心に起こる回転運動であるが、この関節軸から最も長いレバーアームをもつ皮膚に着目した今回の福井勉氏のアプローチはまさしく画期的であり、関節運動を制御するうえで大きな変化を及ぼすことが予測される。臨床における理学療法の戦略として他のアプローチと同様に重要な部分になると確信する。                        


書評「皮膚運動学」機能と治療の考え方  (大阪電気通信大学医療福祉工学部 小柳磨毅)
 著者は序文で執筆の契機を、「肩関節屈曲制限を有する症例の肩峰上における皮膚の皺があまりにも大きく盛り上がっていることに気がつき、その皺を取り除くように皮膚を動かすと可動域が改善する事実に遭遇した。」と記している。皮膚と皮下組織は関節運動を制御する重要な要素であり、熱傷や創傷の瘢痕による関節運動の制限はしばしば経験する。しかし逆説的に皮膚の運動を改善するアプローチが、関節可動域の改善や運動時痛の軽減をもたらすという発想は画期的である。同時に関節軸を中心に回転する関節運動に対し、最も長いレバーアームを持つ皮膚に着目したアプローチは力学的な合理性も高い。
 本書は「皮膚運動の理論」と「運動器疾患に対する治療への応用」から構成されている。理論編では皺線や皮膚割線の意義、運動にともなう皮膚の連続性や緊張線の概念が述べられている。また筋収縮によって浅筋膜より浅層部の皮下組織と深層部の筋間には滑走が生じ、皮膚の他動的移動では浅層部と深層部が反対方向に移動する事実が示されている。さらに体幹や肢節の皮膚運動において、皺が生じる方向の運動は抑制されるがこれを伸張すると促通される、関節を介して骨どうしが近づく運動では皮膚が関節から離れる方向に動く、皮膚の緊張線を張力の強い方向へ誘導すると関節運動が増大するー等の興味深い原則(法則性)が紹介されている。こうした理論の構築は臨床的観察に止まらず、超音波装置による皮下組織の直視や、三次元動作解析装置を駆使した皮膚運動の定量的評価に基づいており、今後の治療展開も含めた発展が期待できる。皮膚運動の操作は運動器疾患における関節可動域や筋運動、さらに姿勢の改善に適応があり、臨床編では四肢と脊柱の運動改善を目的とする徒手やテーピングによる手技が詳述され、シンスプリントをはじめとする症例も紹介されている。 従来の運動器型疾患に対する理学療法は、骨や関節、あるいは筋や腱などの軟部組織を治療対象として想定したアプローチが主体をなしてきた。しかし本書はその想定の確実性に再考の必要があることを示している。評者もこれまで関節や筋に対する技術と認識してきた徒手療法やテーピングなどが、皮膚を介して操作を行っていることを改めて強く認識させられた。スポーツ障害の多くを占め、その病態が解明されつつある腱付着部症に対する治療戦略の発展にも、本書の示す皮膚運動の評価や操作が大いに貢献すると考えられる。 
                 
 書評(石川県リハビリテーションセンター 荒木 茂)
「何だこれは?」この本のタイトルを見て皆さんそう思うだろう。「皮膚運動学」なんて聞いたことがない。私も著者が福井勉氏でなければその本を手に取ることは無かったであろう。「また何をあみ出したのだろうか?」と興味を持って読んでみると、写真が非常に多く、具体的で臨床にすぐ役立つような本になっている。B5サイズ、約150ページ程度であまり負担に感じない。
 第1章は超音波検査装置や三次元操作解析システムを使った皮膚の動きの解析とその意味について書かれている。多少難解ではあるが福井勉氏の講演を聞いた方はおそらく「あの時の話はこういう事だったんだ」と言うことがわかるだろう。第2章は各関節の運動方向別の治療マニュアルになっていて非常に親切に書かれている。それほど難しいテクニックではなくこの書をみながら実践することができるだろう。またテーピングの方法についても書かれておりこれまでの非固定性テーピング治療の1部について理論的な根拠を与えてくれるものである。第3章は症例報告になっており、日常よく遭遇する10疾患の症例を提示して実際の治療について簡潔に書かれている。 まだまだ研究の余地があると述べながらこの書を急いで世に出すことを決断したのはおそらく著者の理学療法に対する思いがあったに違いない。それは日頃、理学療法士が患者に触れながら経験的に感じていることを説明できる大きなヒントがここにあると言うことを多くの理学療法士に早く気づいてもらいたいと思ったからではないだろうか。それに気がついた理学療法士は患者に触れる方法について考え方が大きく変わるに違いない。また、軟部組織モビライゼーション、テーピングの新しい治療法として発展していく可能性がある。「皺」ひとつひとつにも意味がある・・・著者の斬新な発想と感性に敬服させられる本である。
                                 
書評 (ほっとリハビリシステムズ 松井 一人)
これまで、正直私自身は、卒前、卒後、又は臨床の中で学びを得る中で、皮膚についてここまで深く考えることはありませんでした。本誌を手に取られる方は、「皮膚運動学」というタイトルから、一見とても難しく、地域リハビリテーションと果たして関係があるかとお感じになられるかと思いますが、お読みいただく中で、地域リハビリテーションにこそ、皮膚運動学が必要であると感じるようになられると思います。筆者の素晴らしいお人柄どおり、難しいことを大変易しくわかりやすく、丁寧に解説いただいております。
私は、以前筆者の皮膚運動学に関連した講義を受講したことがありました。その内容は目から鱗というか、衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。今回さらに、基本的皮膚の構造や機能から、治療への応用、更には、ケーススタディーまで、多岐にわたり執筆頂いており、画期的な内容となっていると考えます。
地域ケアの現場では、廃用症候群(生活不活発病)にて、要介護状態となる対象者も多く、私の経験上、本誌を参考に取り組むことで、望ましい改善が得られる手ごたえを感じております。さらに、地域の一般高齢者や特定高齢者と関わらせていただく中で、介護予防の教室に至るところまで、本誌からの学びは、応用として活かせる内容であると考えます。更に、今後、在院日数が短縮される傾向へと移行することが予測される医療提供体制の中で、地域リハビリテーションにおいて、亜急性期または、回復期の一部も期待されています。本誌の内容を理解し、地域ケアの現場で応用することで、地域ケアにて果たすことができるセラピストとしての役割がさらに広がりを見せると考えます。今回の本誌は、非常にわかりやすくまとめて頂いているため、私のようなものでも読みやすく即実践に結び付けられる内容になっているかと思います。本誌の中でも、筆者が謙虚に述べられているように、まだまだ、皮膚運動学について未知の部分が多く、今後、私たち読者が、本誌から学ばせて頂いたことを一人でも多くのセラピストが多方面から実践し、検証していく事は今後の理学療法等の発展に重要な意義をなすと考えます。最後に、ここまで長きにわたり、真剣に皮膚運動学について取り組まれ、大変わかりやすく理解しやすい解説を頂き、私たちの活動を後押し頂けるような内容に仕上げて頂きました福井勉先生に心から感謝いたします。                
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